私たちが「家をつくる」とき、当たり前のように大量の資材が運び込まれ、そして数十年後の解体時には、同じ量以上の“廃材”が生まれます。日本では、建設・解体に関わる廃棄物は年間約7,000万トン以上にのぼり、その大半が最終的に“ゴミ”として処理されています。(国土交通省 2023)
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しかし今、世界では建築の考え方が静かに転換しつつあります。
キーワードは 「サーキュラー(循環型)建築」。
素材を使い捨てるのではなく、使い切り、循環させ、また次の命を与える。
そんな未来の家づくりは、本当に実現できるのでしょうか?
■ サーキュラー建築とは何か?
サーキュラー建築とは、資源がぐるぐると循環し続けるシステムとして設計する考え方です。
具体的には以下のような視点が含まれます。
- 解体しやすい構造にすること
- 素材ごとに分解し、再利用できる状態を保つこと
- 自然に還る素材を選ぶこと
- 建材そのものに「次の使い道」を持たせること
これは従来の「スクラップ&ビルド」型の建築とは対極にあります。
■ 解体してもゴミが出ない家は本当に可能なのか?
実はすでに、世界でも日本でも、“ほぼゴミを出さない”建築は始まっています。
● ① 分解可能な構造をつくる
釘や接着剤を多用すると、建材が一体化してしまい再利用できません。
代わりに、
- ボルト接合
- ホゾ組み(木組み)
- ドライジョイント(接着剤を使わない接合)
など、分離しやすい工法が注目されています。
特に日本の伝統建築の木組みは、サーキュラー建築の先駆けともいえる存在です。
数百年経っても部材を外して再利用できる──日本の木造文化の中では当然の考え方でした。

● ② 自然素材そのものを建材にする
解体時にそのまま土に還る素材。
これは最も分かりやすいサーキュラーです。
- 土壁
- 石灰
- 麻(ヘンプ)
- 木
- 漆喰・貝灰
- わら・竹
これらは加工エネルギーが低く、最後に廃棄しても環境負荷が最小限。
わつなぎが取り組む「ヘンプクリート」や「自然素材左官」も、まさにこの循環思想の中にあります。
● ③ 建材として“次の役割”を設計する
近年は「建物を完全に分解し、パーツ単位で再販売する」という欧州の動きもあります。
- 再利用可能な木材
- モジュール化された壁面
- 交換可能な断熱材
- 再生できる床材
「役割が終わったら資材として市場に戻る家」
これは、解体=終わりではなく、解体=始まりという発想です。
■ サーキュラー建築の課題
もちろん、すべてが理想的に循環するわけではありません。
現実的な障害も少なくありません。
● 技術・コスト面の壁
- 分解可能な構造は、施工手間が増える
- 認知が低く、採用されにくい
- 自然素材は工業製品よりも管理が必要
サーキュラーは長期的には価値が高いものの、短期的コストだけで比較されてしまうことが多いのが現状です。
● 建築基準・制度の課題
自然素材や循環建築は、現行基準が想定していない部分が多く、
「安全性は満たしているのに、新しすぎて認められない」
という矛盾も生まれます。
● 産業全体の連携不足
資材を循環させるには、
- 解体業
- 建材業
- 大工・左官
- 設計者
- 地域産業
といった多様なプレイヤーの協働が必要です。
どれかひとつ欠けても、循環は成立しません。
■ 自然素材が示す“もうひとつの未来”
では、私たちは今何から始められるのでしょうか。
答えは案外シンプルです。
「土に還る素材」を選ぶこと。
「分解できる工法」を選ぶこと。
「地域の循環に参加する」こと。
ヘンプや土、木、石灰など、
自然素材を使った建築は、それ自体がすでにサーキュラーの思想を内包しています。
時間をかけて朽ち、また次の建物の一部へ生まれ変わる。
自然素材は、そもそも循環そのものなのです。

■ わつなぎが目指す「循環する家づくり」
わつなぎの活動には、
“住まいは自然の一部として再び還るべきもの”
という視点があります。
- ヘンプクリート
- 自然素材左官
- 地域資源を使った家づくり
- 解体後の素材の循環を意識した設計
これは単にエコな建築をつくるのではなく、
住まい手・地域・自然が途切れずにつながる仕組みを育てることだと考えています。
建築を循環させることは、
暮らしそのものを持続可能にするということでもあります。
■ おわりに:循環する建築へ
「解体してもゴミが出ない家」は、まだ途上の挑戦です。
しかし、自然とともに暮らしてきた日本の知恵や、現代の環境技術が重なりつつある今、
私たちはようやく、本当の意味で“循環する建築”を再び取り戻そうとしています。
建築の未来は、捨てない未来。
素材の声に耳を澄ませながら、資源と共に生きる家づくりを育てていきたい――
そんな想いを込めて、この活動を続けていきたいと思っています。


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