先日、
「ある補助金の審査で『ヘンプクリートは耐火性がなさそうだから都市部では無理』という評価をいただいた。正直、非常に悔しい。しかし、それは我々の説明不足か、あるいは日本の建築界が世界の最新知見から取り残されている証拠ではないか。ここで、私がこれまで調べ上げた『世界の真実』をすべて公開する。」
世界はすでに「1時間耐火」を認めている
「燃えそう」というイメージに対し、具体的な数値があります。
Americhanvre社(アメリカ)のフルスケール耐火試験
2024年7月9日、Americhanvre社はペンシルベニア州ヨークのIntertek試験施設にて、米国初となるヘンプクリート壁に対するフルスケールのASTM E119耐火試験を実施しました。試験体は、中央の骨組みの周囲に厚さ12インチ(約30cm)の「Ereasy」スプレー施工ヘンプクリートを充填し、屋内側(加熱面)と屋外側の両面を石灰しっくいで仕上げた構造です。
この試験体に対し、荷重をかけた状態で1700°F(約926℃)の熱を60分間加え、直後にホースによる強力な散水試験(ホースストリームテスト)を実施しました。試験体は加熱と散水の両方を見事に生き延び、1時間耐火(1-hr rating)の基準をクリアしました。特に驚異的だったのは、激しい加熱を受けていたにもかかわらず、非加熱面(裏面)の温度が周囲の室温から1度も上昇しなかったという圧倒的な遮熱性能です。
引用元:
- 文書名: “Americhanvre achieves one hour fire resistance rating with the Ereasy Spray Applied Hempcrete System via ASTM E119”
- 発行者: Americhanvre Cast Hemp(代表: Cameron A. McIntosh)
- 試験実施日/発行日: 2024年7月9日試験実施 / 2024年7月14日発行
- 参考元:https://nationalhempassociation.org/americhanvre-achieves-one-hour-fire-resistance-rating-with-ereasy-spray-applied-hempcrete-system/
LHM-wall(ヨーロッパ)の長時間の耐火実績
詳細情報: ヨーロッパの試験施設での結果として、厚さ300ミリメートル(約12インチ)のヘンプクリート壁アセンブリは、燃焼することなく最長で1時間40分(100分間)にわたって火炎に耐えることができると報告されています。
このテストで特筆すべき点として、長時間の加熱の末に壁が限界を迎えた際、ヘンプクリートのブロック自体が崩壊するよりも先に、ブロック同士を接着しているモルタル部分が先に限界(破損)を迎えたことが記録されています。これは、ヘンプクリート素材自体の防火・耐火能力が極めて高いことを示しています。
引用元:
- 文書名: 研究報告書 “Hemp + Lime: Examining the Feasibility of Building with Hemp and Lime in USA”
- 発行機関: Parsons Healthy Materials Lab(パーソンズ美術大学 健康的材料研究所)
- 発行時期: 2020年5月
- 引用元:https://healthymaterialslab.org/tool-guides/hemp-lime-1
2024年、歴史が動いた
2024年版の国際住宅コード(IRC)において、「Appendix BL Hemp-Lime (Hempcrete) Construction(付録BL ヘンプライム(ヘンプクリート)建築)」が正式に追加されました。これにより、ヘンプクリートは住宅構造物(1世帯および2世帯住宅、タウンハウスなど)における「非耐力建材および壁の充填システム」として公式に承認されました。
この承認により、建築家や建設業者が建築許可申請においてヘンプクリートを標準的な建材として指定しやすくなり、主流の断熱材市場において現実的な選択肢としての信頼性が飛躍的に向上しました。資料が示す「安全性」と「汎用性」の具体的なお墨付き(規定内容)は以下の通りです。
1. 「安全性」に関する世界標準のお墨付き IRCのガイドラインでは、ヘンプクリートを建築物で安全に利用するための厳格かつ客観的な基準が設けられました。
- 防火・耐火性能の規格化: ASTM E84規格に基づく表面燃焼特性(火炎伝播指数および発煙指数)の要件を満たすことが義務付けられました。また、耐火等級についてはASTM E119やUL 263の試験に従って決定されることや、暖炉や煙突から一定の離隔距離を保つことなどが明記されています。
- 機械的強度の保証: インフィル(充填材)としての自重や、表面のしっくい仕上げを保持し続けるための完全性を示す基準として、最低29 psi(0.2 MPa)の圧縮強度を実証することが求められています。
- 設備の保護と安全な隔離: 内部を通る電気配線、配電盤、配管、機械ダクトなどは、プラスチック管や保護コーティングされた金属管に隔離するか、耐アルカリ性の材料でヘンプクリートから分離することで、設備の腐食や発火リスクを防ぎ安全を確保するよう規定されています。
- 防湿・防水管理: 湿気による構造劣化を防ぐため、むき出しの地面や舗装面から8インチ(約20cm)以上の高さを確保することや、基礎からの分離、窓台などの水平面での水切りの設置など、水分の侵入を制御する厳格な要件が定められました。
2. 「汎用性」に関する世界標準のお墨付き IRCでは、ヘンプクリートが単一の用途にとどまらず、多様な設計や施工方法に適応できる汎用性の高い素材として定義されています。
- あらゆる施工アプローチの標準化: 現場での手作業による充填(ハンドキャスト)、機械を使ったスプレー施工、工場で事前製造されるプレキャストブロック、パネル、さらには既存のコンクリート壁や組積造の壁に対する**ライニング(裏打ち)**まで、考えうるあらゆる施工方法がカバーされ、それぞれに必要な型枠やモルタルの要件が明記されました。
- 断熱と蓄熱の性能指標: ヘンプクリートの密度(12.5〜25 lb/ft3)に応じた熱抵抗値(R値)の基準表(表BL106.2)が用意されており、設計者が断熱材およびサーマルマス(蓄熱体)としての性能を計算に組み込むことが容易になりました。
- 柔軟な表面仕上げ: 外壁および内壁の仕上げ材として、石灰しっくいや粘土しっくいなど、特定の透湿性を持つ多様な仕上げ方法が許可され、異種基材との接合部(ひび割れ防止のメッシュ使用など)に関するルールも規定されています。
このように、2024年のIRCへの正式記載(Appendix BL)は、ヘンプクリートが単なる「環境に優しいニッチな代替素材」から、世界中の建築検査官や行政が公式な基準に基づいて審査・承認できる「安全で汎用性の高い標準建材」へと格上げされたことを意味しています。
「2024 International Residential Code (IRC) – Appendix BL: HEMP-LIME (HEMPCRETE) CONSTRUCTION」**に基づく内容です。
1. 「安全性」に関する規定の引用元
- 防火・耐火性能の規格化:
- ASTM E84に基づく表面燃焼特性(火炎伝播・発煙指数)の要件:Section BL106.4
- ASTM E119やUL 263に基づく耐火等級の決定:Section BL105.1
- 暖炉や煙突からの安全な離隔距離:Section BL105.2
- 機械的強度の保証:
- 最低29 psi(0.2 MPa)の圧縮強度の実証:Section BL107.1
- 設備の保護と安全な隔離:
- 電気配線、配管、機械ダクトのプラスチック管等での隔離、または耐アルカリ性材料での分離:Section BL103.5
- 防湿・防水管理:
- 露出した地面や舗装面から8インチ(約20cm)以上の高さの確保:Section BL103.7.6, BL103.7.7
- 基礎からの防湿層による分離:Section BL103.7.8
- 窓台など水平面での水切りと8%の勾配設定:Section BL103.7.4
2. 「汎用性」に関する規定の引用元
- あらゆる施工アプローチの標準化:
- 手作業での充填(ハンドキャスト):Section BL103.6.3
- スプレー施工(機械吹き付け):Section BL103.6.4
- プレキャストブロック:Section BL103.6.5
- パネル:Section BL103.6.6
- 既存壁へのライニング(裏打ち):Section BL103.6.7
- 断熱と蓄熱の性能指標:
- 密度に応じた熱抵抗値(R値)の基準表:Table BL106.2
- 質量壁(サーマルマス)としての熱容量計算要件:Section BL106.1
- 柔軟な表面仕上げ:
- 透湿性(5 perms以上)の要件:Section BL104.1
- 石灰しっくい、粘土しっくいなどの多様な仕上げ:Section BL104.3
- 異種基材との接合部などにおける補強(メッシュ等の使用):Section BL104.3.2
反省とこれから
今回の不採択は、日本にこの技術を根付かせるための『火』を私につけてくれた。私にも落ち度があった。申請資料を見返すと、これまで調べてきたエビデンスを書き足りていなかった。
3年間調べ続けていた私にとっては、燃えないのがグローバルスタンダード、当たり前の事実であって、研究文献を二つほど示せば十分と思っていた自分よがりのところがあったことに気がつく。
悔しい。
じゃあこれからはこれまで調べてきた詳細を徹底的に説明するしかない。
ふわっと燃えないではなくて、どの試験でどのように行い、どのような結果をもたらしか。
みた人が、聞いた人が納得する資料を作るしかない。
何度も思っているが、この試験に難しいことは何もない。
だって試験結果は海外に出ているのだから。
鎖国社会の日本を変えるには具体的なデータを集めて納得させるしかない。

